2006年日本平和大会 in岩国・広島


大会基調報告
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基調報告


2006年12月8日開会総会にて
2006年日本平和大会実行委員会を代表して
日本平和委員会事務局長 千坂 純


 日米軍事同盟打破、基地撤去2006年日本平和大会に参加されたみなさん、ごくろうさまです。実行委員会を代表し、この一年間の私たちの平和のたたかいの到達を確認し、今後の運動の方向を提起する「基調報告」を行ないます。

1、この間の平和を守るたたかいの発展と成果
―― 平和の世論と運動が力を発揮し変化を生み出している ――


 まず私たちは、この1年間、米軍基地再編強化反対をはじめとする「戦争する国づくり」を許さないたたかいをすすめてきましたが、平和を守るたたかいが内外のさまざまな分野で力強く発展してきたことを確認したいと思います。


(1) 日本でも平和の世論と運動が諸分野で発展し、変化をつくりだしてきた


◆ 憲法改悪、教育基本法改悪、侵略戦争無反省などに対するたたかいでも変化が

 新たに誕生した安倍首相は、「5年以内の改憲」を掲げる戦後初めての首相です。そして、その改憲の最大のねらいが、憲法九条を改悪して集団的自衛権を行使し、アメリカの戦争に参加できるようにすることにあることを、はっきりと述べています。しかし、この憲法改悪に反対するたたかいも、ひきつづき力強く発展しています。「9条の会」は今年10月までに5639に広がり、憲法改悪反対の住民過半数署名も各地で生まれ、憲法公布60周年の11月3日には各地で数千人規模の集会が開かれました。
 この憲法改悪と一体のものとして、政府は教育基本法の改悪をすすめようとし、いま国会で緊迫したたたかいがくり広げられていますが、これに反対する運動でも大きな変化が生まれています。2万7千人が集まった東京での10.14集会や、北海道での組合の違いを超えた共同による1万人を超す集会など、各地で改悪に反対する共同の大きな広がりが生まれ、マスコミなどにも批判が広がっています。世論調査でも多数の国民が今国会での強行に反対しています。強行を許さず、廃案を求める声を強めましょう。この間のたたかいは、教育基本法改悪が子どもの豊かな未来を奪い、日本を「戦争する国」へとすすめる危険なものであることを明らかにするとともに、国民のなかに教育の国家統制を許さず、教育を国民の手に取り戻す大きなエネルギーがあることを示しました。ここに確信をもって、運動をさらに広げようではありませんか。
 小泉前首相の靖国神社参拝に見られる日本政府の侵略戦争無反省の立場は、戦後の国際社会の平和秩序の大前提をくつがえすものです。私たちもその批判の先頭に立ってきましが、政府の立場はアジアと世界の人々の批判を浴び、いっそう孤立を深めてきました。そしてこの中で、従来侵略戦争美化の「靖国史観」の立場を表明してきた安倍首相も、植民地支配と侵略戦争への反省と謝罪の立場を表明した「村山談話」や「河野談話」を認めざるをえなくなり、中韓両国首脳との会談も再開するなど、一定の前向きの変化が生まれています。ここにも平和と進歩の流れが大きくなっていることが示されています。

◆ 大きく広がった米軍基地再編強化に反対する自治体・住民のたたかい

 私たちがこの間重視してとりくんできた米軍基地再編強化に反対するたたかいは、「戦争する国づくり」を許さないたたかいの中心的な課題です。この分野でも、日米政府とがっぷり四つに組んだたたかいを各地でくり広げ、基地強化計画を日米両政府の思惑通りすすめさせてこなかったことをまず、確認したいと思います。
 昨年の大会では、いま日本ですすめられている「米軍再編」が、@日米軍事同盟を地球規模に侵略的に強化するものであり、Aそのために米軍基地を世界中への出撃・司令基地としていっそう強化するとともに、B自衛隊の米軍との従属的一体化をすすめ、アメリカの戦争に自衛隊が地球規模で参戦する体制づくりをめざす、憲法九条改悪の動きと一体の問題であることを明らかにしました。そしてこれを阻止することは、日本だけでなく、アジアと世界の平和にとっても重要であることを強調し、とりわけ米軍基地の強化に反対する自治体・住民ぐるみの運動の発展をよびかけました。
 その後、日米政府は全国の自治体・住民の反対の意思を無視して、5月に「最終合意」を勝手に取り交わし、政府はこれを自治体に押しつける大規模な策動をおしすすめてきました。その中で残念ながら基地強化を受け入れる一部の自治体首長も生まれています。しかし重要なことは、住民はけっして基地強化を受け入れていないということであり、政府の権力、脅迫、カネをつかった、なりふりかなわぬとりくみにも関わらず、いまだに多数の地域で基地強化・恒久化に反対する自治体・住民ぐるみの運動が力強く展開され、全国のたたかいが連帯して政府の計画の前にたちはだかっていることです。このなかで沖縄・名護では10年におよぶたたかいのなかで、閣議決定された従来の「新基地建設計画」を杭1本うたせないまま放棄させ、新しい局面でのたたかいになっています。これらは戦後史の中でも特筆すべきたたかいとなっています。
 特にこの一年をふり返るとき、ここ岩国・広島の岩国基地への米空母艦載機移転反対のたたかいは、全国を大きく激励する役割を果たしてきました。なかでも3月の艦載機移転の是非を問う住民投票運動の勝利は歴史的意義を持っています。それは、基地問題は「国の専管事項だ」とか「住民投票は無意味」などという異常な政府の圧力をはね返し、反対の人も賛成の人も住民投票を成功させ「市民の未来は市民が決めよう」という、最も広範な市民の共同をつくりだしての勝利でした。そして、市民の利益を守るために、政府に対してキッパリと基地強化反対の立場を貫く岩国市長や広島西部自治体首長の姿は、自治体の本来あるべき姿を体現するものとして、全国の人々を励ましています。座間、相模原、鹿屋、築城などでも、自治体・住民ぐるみのたたかいがひきつづき展開されています。これらの事実は、住民のくらしと生命を守るという地方自治体としての当たり前の姿と米軍基地の強化は相容れないことを示している、ということが大切です。
 沖縄でも、新基地建設をめぐって激しい攻防がくり広げられてきました。11月に行なわれた知事選では、県民の7、8割が新基地建設に反対する世論を背景に、野党5党が共同し、新基地建設反対、米軍基地縮小などを掲げて糸数慶子候補勝利のためにたたかいました。糸数候補は惜敗しましたが31万票を獲得し、自公候補の得票率は51%に止まりました。しかも「普天間基地の危険の3年以内の除去」「新基地の政府案に反対」などと言わざるをえませんでした。そして「経済振興」を前面に掲げ、露骨な企業・団体ぐるみの必死の選挙をくり広げました。県民の多数がいまなお新基地建設反対であることは選挙時の世論調査などでも示されています。新知事が政府とともに新基地建設を推し進めるなら、県民の反発は必至です。すでに政府と新知事は、早期の合意づくりに向けた協議を始めようとしていますが、政府からは「普天間基地の早期返還は無理」「政府案は変えられない」「V字滑走路の緊急時の双方向飛行は容認」など、強行の動きが出ています。これは矛盾をいっそう激化させざるをえません。
 政府の圧力の前に首長が容認を表明した例も生まれていますが、さまざまの条件もつけられるなど、それほど単純ではありません。なによりも住民と基地強化の深刻な矛盾はなくならず、各地で多数の住民のたたかいが続いています。横須賀でも米原子力空母配備反対を公約に掲げて当選した市長が「原子力空母は安全」という米日政府の「説明」を無条件に受け入れて、容認の立場に転換しました。しかし、世論調査でも市民の6割が反対しています。そしていま、広範な市民が共同して原子力空母母港化の是非を問う住民投票条例制定直接請求署名運動がくり広げられています。平和大会に結集する諸団体が中心になって3万人が参加した7・9横須賀大集会の成功は、こうした新たな共同と運動を生み出す大きなバネになりました。この横須賀のたたかいは、第一に米軍再編強化の中心的な計画であるという点からも、第二に首長が政府の圧力に屈したというところで、住民が反対の声をあげてゆくたたかいの象徴として、文字通り全国的意義のあるたたかいであり、あらためて連帯と支援をよびかけるものであります。
 米軍の「殴りこみ部隊」が集中し、米軍の「中軸基地」とされている日本の各地で、これだけの規模の自治体・住民のたたかいがくり広げられ、協議から3年を経てもいまだにまともに計画をすすめられない状況が続いている ―― こうした状況にあるのは、世界でも日本だけです。そしてそれは、無法なアメリカの戦争体制づくりの重大な打撃になっているのです。日米軍事同盟の地球規模の拡大強化を「継承」し、「5年以内の改憲」を掲げた安倍政権の野望はたしかに危険です。しかし、これまで見たように、この間のたたかいは、平和世論が力を発揮し、大きな変化を生み出していることをはっきりと示しています。ここに確信もっていっそうの前進をつくりだそうではありませんか。


(2) 世界では大きな変化が生まれている


 この1年の世界で、軍事的解決でなく、平和的解決を求めるという平和の流れの発展はいっそう顕著です。このことは、憲法9条を否定し、日米軍事同盟の強化をすすめる安倍内閣こそ世界から孤立した時代に逆行した流れであり、わたしたちの立場こそ世界の主流であることを鮮やかに浮き彫りにしています。
 ブッシュ政権は無法な先制攻撃戦略を公然と掲げ、イラク戦争と占領をおしすすめてきました。しかしいまや、イラク戦争と占領の誤りと破綻は、誰の目にも明らかです。ブッシュ政権がかざした「大義」なるものは完全に崩壊し、それが無法な侵略戦争であったことは明白になりました。その結果、65万人ものイラク人の命が奪われたと推計されるほど、甚大な犠牲が生まれ、イラクは内戦状態に陥っています。無法な戦争に駆り出された米兵の死者もすでに2800人を超え、11月の中間選挙ではブッシュ陣営が大敗し、ラムズフェルド国防長官、ボルトン国連大使は辞任に追い込まれました。侵略戦争をともにおしすすめた英国のブレア首相も退陣に追い込まれました。イラク戦争をいまだに無条件に正当化し続けているのは、世界でも安倍政権ぐらいです。いまや、無法な先制攻撃戦略を批判し、核兵器廃絶を求め、国連憲章にもとづく平和秩序を求める流れは、世界の大勢になっています。
 世界人口の8割を占める非同盟諸国首脳会議が平和のイニシアティブで積極的な役割を果たし、ASEAN(東南アジア諸国連合)や上海機構、南米共同体など、軍事同盟でない平和な共同体づくりをめざす流れが世界各地に広がり、中南米では新たにエクアドルやニカラグアに左派政権が生まれ、ベネズエラのチャベス政権が圧倒的支持で再選されるなど、アメリカから経済的・軍事的に自立した道を歩む国々が圧倒的多数を占める状況が生まれています。もはや、アメリカを中心とする軍事同盟にしがみつく日本政府のような勢力は、ますます世界の少数派になっています。その根底に世界の反戦・反核平和世論の発展があることは明白です。
 北朝鮮の核実験強行に対する国際社会の対応にも、世界の平和を求める流れが反映しています。北朝鮮の行動は、朝鮮半島の非核化という自らの約束や国際合意に背き、アジアと世界の緊張を高めるもので断じて許せません。私たちは北朝鮮の核計画の放棄と「6カ国協議」への復帰を求めてきました。同時に、この問題を国際社会の一致した努力で平和的外交的に解決することを求めてきました。そして国際社会は、軍事的対応ではなく、国連安保理決議に見られるようにこの方向で一致して対応してきました。ここに今日の国際社会の到達点があります。この中で、北朝鮮も「6カ国協議」への復帰を表明する事態が生まれています。
 ところが安倍政権と一部の論者は、北朝鮮問題を利用して、基地・日米軍事同盟強化必要論を盛んにふりまいています。基地と軍事同盟を強化し、戦争体制を強化すること、いわんや核武装論議や核兵器持ち込み容認の論議を行なうことは、緊張を高め、平和的外交的解決の道を遠ざけるものです。国連決議が「すみやかな履行」を求めている「第4回6カ国協議共同声明」は、北朝鮮の核計画の放棄とともに、関係各国が相互に敵対的関係を解消し、緊張を和らげ、平和的関係を築くことをめざしています。世界の動きは、北朝鮮問題を利用した軍事強化論者の論拠がなりたたないものであることを示しています。


2、基地、軍事同盟をめぐるたたかいの課題と展望、運動の方向

 平和大会は、なによりもそのときどきの切実緊急な平和の課題でのたたかいをすすめるとともに、根源にある米軍基地と日米軍事同盟をなくす流れを発展させる重要な役割を果たしてきました。今平和大会を、米軍基地再編・強化に反対する課題をはじめ、「戦争する国づくり」に反対し、その攻撃を打ち破っていく新たな出発点にしましょう。国民多数を視野に入れた運動の発展のために次の点を強調し、問題提起したいと思います。


(1)米軍基地強化に反対する自治体・住民のたたかいの画期的な到達点を確信に前進を


 すでに見たように、米軍再編強化に反対する自治体・住民のたたかいは、日米政府の前に大きく立ちはだかっています。その力の源泉は、「爆音にさらされる町を子どもたちに渡すわけにはいけない」など、住民の切実な願いと基地強化が相容れなくなっているからです。この間、わたしたちは、軍事基地撤去、安保条約の廃棄をかかげるとともに、切実緊急な願いにもとづく積極的な一致点での住民の団結と共同をすすめてきました。さらに岩国住民投票やいま取り組まれている横須賀住民投票請求署名では、基地強化反対の一致点からさらに発展させて、「住民の意見を聞け」という最も広範かつ根本的な一致点での共同をひろげる経験をしました。こうした教訓にも大いに学んで、それぞれの地域で、どういう一致点で共同をひろげるのか、何が積極的な一致点なのか、よく研究して運動を発展させていくことをよびかけたいと思います。


(2)福祉、くらし破壊の一方で米軍基地強化に大盤振る舞い ― この暴挙へ批判の声を


 米軍基地再編に反対する声を国民多数派にしていくためには、すでに明らかにしたようなこの問題の危険な本質をひろく宣伝・対話していくとともに、「国民のくらしを破壊する一方で米軍のためには3兆円も投入するのか」という角度から訴えることが重要です。政府は自治体・住民の当然のたたかいを押しつぶそうと、来年の通常国会に、米軍再編のための特別措置法案を提出しようとしています。それは基地強化の協力の度合いに応じて、交付金を増額するというものといわれています。まさに札束で基地を押しつける卑劣なやり方です。さらにグアムへの基地建設費用の負担ができるようにするものです。一方で福祉や自治体予算を削減し自治体財政と国民生活を破壊しながら、米軍のためなら税金を湯水のごとく支出する、このような暴挙を許さない声をあげましょう。


(3)完全に失敗に終わったイラク戦争のような戦争に加担する
   基地強化や自衛隊の海外派兵体制づくりにノー!の声を


 しかもこの米軍再編強化は、イラク戦争のような無法な戦争を世界どこででも迅速に行なうことができる体制をつくるためのものです。さらに米軍と自衛隊を一体化し、「防衛省」昇格法に見られるように自衛隊の海外派兵体制を本格的に推進し、イラク戦争型の戦争に自衛隊を地球規模で参戦させる体制をつくるものです。「国民保護」の名による有事体制づくりもこれと一体の動きです。世界で完全にノーの審判が下り、提唱者が辞任に追い込まれた戦争のための米軍再編強化のために、私たちの巨額の税金を注ぎ込み、国民に被害を押し付ける―― これほど愚かなことはありません。イラクから自衛隊をただちに撤退し、こうした愚かな基地・軍事同盟強化は止めよの声をあげましょう。


(4)基地撤去、安保廃棄の多数派づくりへの新しい条件


 いまや憲法九条と日米軍事同盟の矛盾は極限にまで達しています。憲法九条改悪を政治日程にまでのせる衝動の強まりは、日米軍事同盟の地球規模への拡大があります。憲法九条を守り、日本を海外で戦争する国にしないことをめざす広範な世論と日米軍事同盟は、客観的にはまったく相容れない存在になっています。憲法九条で平和外交をすすめる道を歩むのか、それとも、基地と日米軍事同盟を強化して、憲法九条を改悪し、アメリカとともに海外で戦争できる国にするのかが、鋭く問われています。いま、憲法を守ることを求める多くの人々が、この改憲の動きについて、学び、語り、その根源にあるものへ目を向けています。このとき、私たちは、憲法改悪反対の一点での共同を誠実にすすめるとともに、基地と日米軍事同盟の危険な問題について知らせ、対話して世界の平和の流れに逆行する日米軍事同盟に反対する世論を大きく広げていくことが求められています。


(5)米軍基地反対などの国際連帯を強めよう


 平和大会が一貫して追求してきた基地・軍事同盟問題での国際連帯がこの間、大きく発展し、その方向が世界的な流れになろうとしています。今年6月にカナダで開かれた世界平和フォーラムでも世界各地の米軍基地反対運動が交流され、この中で自治体・住民ぐるみで展開される日本の米軍基地反対運動に大きな注目が寄せられました。昨年の平和大会には、南米のエクアドルの代表が参加しましたが、このエクアドルでは先月、米軍基地撤去を掲げる左派政権が誕生しました。そしてここで来年3月、史上初めての外国軍事基地撤去国際大会が開かれます。この大会は、米軍基地に反対する世界の運動の連帯を強める重要なステップになる可能性があります。私たちは、この反基地国際大会に日本からも代表団を送ることを呼びかけます。
 最後に当面の行動について提起を行ないたいと思います。これまで見たように、各地のたたかいが発展し、全国的な連帯の新たな条件がひろがっています。この全国のたたかいの連帯を強め、互いに励ましあいながら、いっそう発展させることが求められています。特に当面、いまくり広げられている横須賀の原子力空母母港化の是非を問う住民投票運動を成功させるたたかいへの全国的支援を強めましょう。また、イラクからの自衛隊撤退、憲法改悪反対、米軍再編強化反対などを掲げた3・20イラク戦争開戦4周年の行動を、国際連帯、全国連帯の行動として大きく成功させましょう。

以上


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